研究概要 |
素材産業分野では,コンピュータシミュレーション解析による製品開発が必須になってきており,シミュレーション解析で用いる素材の高精度な熱物性値が,産業界から強く要望されているが,ニッケル基合金の様な高温耐熱材料や溶融シリコンの様な半導体材料の高温融体は化学的に極めて活性で,測定自体が困難であることから,信頼に足る熱物性値が得られているとは言い難い,その理由は,(1)高温での測定の困難さに加えて,(2)容器壁面と高温融体との反応による化学的な汚染,(3)光学測定を行う際の反応容器や坩堝からの迷光,(4)試料内の対流などが原因と考えられる.こうした問題点を解決するために,本研究では,電磁浮遊法を活用した無容器での高温融体熱輸送特性計測を提案する。すなわち,本研究の目的は,容器壁面からの汚染を防止し,真空保持,温度制御が可能な電磁浮遊技術による,静磁場を利用した浮遊式高精度熱物性測定装置を開発し,シリコン融体の熱伝導率測定を中心とする熱物性を測定することである.具体的には,静磁場中で浮遊した液滴に半導体レーザーの照射による交流加熱を行い,液滴の下部の温度応答を測定することにより,温度振幅から定圧モル熱容量を,レーザーの周期と温度応答の位相差から熱伝導率と半球全放射率を測定できる方法を開発した.溶融シリコンの熱伝導率は,静磁場の強度を0.5Tから2Tに増大すると対流が抑制されて値が減少するが,2T以上では,ほぼ一定の値になることが分かった.
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