研究課題
基盤研究(B)
今年度には、高温実験および水モデル実験の手法を併用し、その場製造したMg蒸気を利用した溶鋼脱酸における脱酸生成物であるMgO介在物の除去および微細化の効果を調べた。また、その除去と微細化のメカニズムおよび最適な脱酸操作条件を調査した。なお、超音波による介在物除去のためにキャビテーション動力学も調査した。1.高温実験では、15kW、100kHzの高周波誘導溶解炉を用いて行った。実験温度は1550℃〜1650℃、初期酸素濃度は100〜1000ppmの間で変化させ、CIPで作成したモル比2対1のMgO-Alペレットを0.5g〜3.0g使用した。これらの実験条件で、その場製造したMg蒸気を利用して脱酸実験を行い、一定の時間間隔に採取した鉄試料について、酸素と溶鋼中マグネシウム濃度を測定した。また、凝固後の試料中の脱酸生成物を観察し、単位面積に当たりの介在物個数および粒径分布に及ぼす上記の操作因子の影響を検討した。2.酸素分析結果の解析によって、ペレットを分割投入することと、マグネシウムの分圧を最適値に調節してキャリアガス流量を適切に大きくすることはマグネシウムの脱酸効率を向上させることが分かった。走査電子顕微鏡の観察により、Mgガスの脱酸生成物は平均粒径が0.5μmで、非常に微細であることが判明した。MgOのAl熱還元反応は実験の初期に速く進行し、その後遅くなるため、脱酸生成物の量は実験の初期に急激に増加し、最大値をとった後に減少し、最後には非常に低くまで低下することが分かった。さらに、マグネシウムの分圧の最適値が低いため、脱酸反応が主に気泡の表面で起こり、脱酸生成物の量が顕著に低減できることが分かった。3.気泡による介在物除去のメカニズムを検討するため、ガス吹き込みによる介在物除去の水モデル実験を行い、上昇気泡による介在物の衝突・随伴挙動、および、スラグによる浮上介在物の吸着挙動を高速度ビデオカメラで観察検討した。介在物は浮上気泡と衝突した後、気泡に随伴しながら浮上することを判明した。気泡のウェイク、および、気泡の浮上で形成した浴内の循環流によって浮上した介在物の一部をスラグ相に吸着除去できることが分かった。4.音響放射圧を利用した微細介在物の物理的の除去についても検討した。ことに、超音波照射下での音場設計と微細粒子存在下でのキャビテーション発生の閾値、キャビテーション気泡等の異相界面周りでの化学反応促進について水モデル系での調査を行い、関連する基礎データを集積した。以上の研究成果により、高純度、高清浄鋼の製造プロセスの基本構想が確立された。今後は、他の操作因子がMgの脱酸生成物に及ぼす影響を調べ、TEMで析出した微細なMgO介在物の構造解析、および、気泡による介在物の除去挙動の数学的モデルによる解析を行い、さらに、従来のAl脱酸法と比較検討して本法の優位性を検証する。
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Proc.of the 2nd Intern.Conf.on Process Development in Iron & Steelmaking (Scan-Met II), LULEA, Sweden, June 6-8 1
ページ: 127-133
Proc.of Intern.Conf.on Cybernetics and Information Technologies, Systems and Applications(CITSA 2004), Orlando, USA, July 21-25 (CD-ROM)