今年度は、機能性ナノ粒子として酸化等を防止するためシリカをナノコーティングした磁性金属鉄ナノ粒子、高屈折率チタニア粒子の合成とナノ構造設計を第一に試みた。磁性金属ナノ粒子材料はα-鉄を対象とし、ゲルゾル法で液相合成した酸化鉄ナノ粒子をゾルゲル法でシリカ被覆を行い、水素還元により合成するプロセスについて樹脂間への分散複合化が容易な均一分散性粒子の調整法を確立した。特に、シリカナノコーテイングの際に被覆するシリカ膜が粒子問に固体架橋を形成して凝集体を作ることを防止するため、コーティング前の粒子の分散条件として溶媒中に残留するイオン濃度の低減と粒子濃度、および被覆膜厚の調整が重要であることを明らかにした。また、還元後の鉄粒子の再酸化防止に必要な膜厚設計条件も求めた。得られたシリカ被覆ナノ粒子の微構造を高分解能TEMにより解析し、還元過程で核の鉄粒子と被膜シリカ間に空隙が形成されること、核の鉄粒子は同じ条件で合成、還元しても単結晶や多結晶体など様々な形態の粒子からなることも明らかにした。さらに、核粒子の粒子径制御を行うため、生物由来の界面活性物質介在下で酸化鉄粒子の合成を行い、分散性の高い酸化鉄ナノ粒子の合成に成功した。一方、チタニアについても、光触媒作用があるため樹脂と複合化する場合にマトリックスである樹脂を分解しないためのシリカおよびシランカップリング処理による被覆条件について検討を行った。こうした、シリカ被覆複合化粒子の樹脂への分散性、濡れ性を向上させるため、シランカップリング剤による表面処理に及ぼす粒子径、表面ナノ構造の影響について検討した結果、ナノ粒子になると単位表面積当りのカップリング剤反応量がサブミクロン粒子に比べ減少することなどナノ粒子固有の問題があることも明らかにした。
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