円管内乱流への界面活性剤添加による抵抗低減現象の解明を目的として実験的研究を行い、界面活性剤水溶液のレオロジー特性と乱流構造の発達に関する諸点を明らかにした。特に、紐状ミセルの形成に必要とされる対イオンの量を従来の報告例よりも極端に多くした場合、ミセルの示す特性がどのように異なってくるのかを明らかにした。また、界面活性剤水溶液の管入り口から完全発達部に至るまでの流れの発達領域の乱流特性を計測し、ニュートン流体の乱流発達域の流れとは特性が大きく異なることを明らかにした。 一方、固体微粒子と界面活性剤の紐状ミセルの共存系に関しては、潜熱輸送を利用した省エネルギー型空調システムへの応用を念頭において、氷微粒子の分散スラリーおよびトリメチロールエタン(TME)のクラスレートハイドレート分散スラリーを研究対象として選定した。これらのスラリーに紐状ミセルを形成する界面活性剤を添加し、そのレオロジー特性を測定した。氷スラリーについては氷微粒子の分散性を良くし、氷の結晶成長を阻害すると同時に紐状ミセルの存在による抵抗低減が可能な添加剤を発見した。また、TMEの水溶液系については高温でクラスレートハイドレート分散スラリーが生成しない条件化では界面活性剤による紐状ミセルの形成も疎外されるものの、温度が低下して微粒子が生成すると紐状ミセルが形成され、レオロジー特性に劇的な変化が認められた。また、氷スラリー及びクラスレートハイドレート分散スラリーの乱流域におけるスラリー搬送動力を測定し、空調システムにおける省エネルギー化が可能であることを示した。更に搬送動力の定量的評価より空調システムにおける省エネルギー効果を明らかにした。 固体微粒子と界面活性剤の紐状ミセルの共存系における粘弾性の発現に関しては実験を実施中であるが、乱流抵抗減少の観察結果より粘弾性の発現が示唆されること、見かけ粘度の測定結果より紐状ミセルの出現とその粘弾性への寄与が予想されるものの、粘弾性の直接測定は今後の課題となっている。
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