研究概要 |
燃料電池の膜材には,一般的にパーフルオロスルホン酸系膜が用いられているが,低温作動のため電極触媒のCO被毒が大きな問題点となっている。そこで,セラミック膜が電解質として利用できれば,より高温域で作動可能となり,また,薄膜化が期待できる。本研究において,チタンリン複合酸化物(TiP)をTiO_2ナノ細孔に担持したリン含有チタニア複合膜(Ti/TiP)が高プロトン伝導性を示すことを明らかとしている。セラミック材料であるTi/Tip膜を燃料電池隔膜に応用するためには,基材にTi/Tip膜を製膜し,さらに触媒を担持した膜電極接合体(MEA)を構築する必要がある。そこでプロトン伝導材料であるTi/Tipを用いて,電子伝導性を有するカーボンペーパー上に製膜したMEA-1,およびカーボンペーパー上にカーボン粒子からなる中間層を形成した後に製膜したMEA-2を作製し,中温域で使用可能な無機材料のMEAを構築した。 MEA-1におけるi-V特性は,開放起電力は160mV,最大電力密度は0.076mW/cm^2を示した。プロトン輸率は約0.8を示し,カーボンペーパーを用いてMEAを構築し,発電することが可能であることを明らかとした。 MEA-2は開放起電力110mV,最大電力密度0.48mW/cm^2を示した。MEA-1と比較して,最大電力密度は約6倍向上した。MEA-2においては,カーボンペーパー上に,カーボン粒子とポリイミドからなる中間層を形成しているために,Ti/Tip膜の薄膜化が可能であり,膜抵抗の低減につながり,電力密度が上昇したと考えられる。しかしながら,起電力法によるプロトン輸率が約0.2を示したことから,原料ガスがクロスオーバーしたために,低い開放起電力を示したと考えられる。今後,プロトン輸率の高いMEAを作製することで,さらなる性能の向上が期待される。
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