研究概要 |
新規なプロトン伝導材料としてのナノ構造を制御した無機材料を提案し,そのプロトン伝導特性を明らかとするとともに,膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)を創製し燃料電池発電特性を明らかとすることを研究目的とし,以下を明らかとした。 (1)ナノ構造制御によるプロトン伝導性薄膜の創製 ・酸化チタンを用いて数nmの細孔を有するナノ多孔性基材(Ti)を作製し,その細孔中に高プロトン伝導材料であるチタンリン複合酸化物(Tip)を充填することで,ナノ構造制御を制御したセラミック薄膜(Ti/TiP)を創製した。150℃,水蒸気圧2.5kPa(0.5RH%)では,無加湿時に比べ3桁も大きい10^<-2>S/cmという高い値を示した。これは,低水蒸気圧においても膜細孔表面に吸着した水分子によりプロトンの解離が促進され,水分子を介してプロトンがホッピング移動したためと考えられる。 (2)MEAの構築と燃料電池発電特性 プロトン伝導材料であるTi/Tipを用いて,電子伝導性を有するカーボンペーパー上に製膜したMEA-1,およびカーボンペーパー上にカーボン粒子からなる中間層を形成した後に製膜したMEA-2を作製し,中温域で使用可能な無機材料のMEAを構築した。 MEA-1におけるi-V特性は,開放起電力は160mV,最大電力密度は0.076mW/cm^2を示した。プロトン輸率は約0.8を示し,カーボンペーパーを用いてMEAを構築し,発電することが可能であることが明らかとなった。MEA-2は開放起電力110mV,最大電力密度0.48mW/cm^2を示した。MEA-1と比較して,最大電力密度は約6倍向上した。MEA-2においては,カーボンペーパー上に,カーボン粒子とポリイミドからなる中間層を形成しているために,Ti/Tip膜の薄膜化が可能であり,膜抵抗の低減につながり,電力密度が上昇したと考えられる。しかしながら,起電力法によるプロトン輸率が約0.2を示したことから,原料ガスがクロスオーバーしたために,低い開放起電力を示したと考えられる。今後,プロトン輸率の高いMEAを作製することで,さらなる性能の向上が期待される。
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