研究概要 |
炭酸ジメチル(DMC)はポリマー原料や燃料改質剤として用いられる高付加価値化合物である。その製造法として,我々は超臨界CO_2中でメタノールとCO_2を直接反応させてDMCを合成する試みを行い、これまでジルコニア触媒が不均一触媒として有効で環境に付加を与えないグリーン合成ができることを確認したものの、微量の水が収率を大きく低下させることを確認した。っまり、収率増大のためには系内から水を除去しなければならず、装置内に脱水部を付与させる必要がある。 そこで、本研究では以前に開発した熱駆動溶媒循環システムを本DMC合成反応に応用することにより,不均一触媒反応によりDMC合成を行いつつ、副生する水を除去する機構を熱駆動循環内に設置したループリアクターを開発し、メタノールとCO_2を原料とするDMCの高効率生産プロセスの開発を目的とした。 本年度は、昨年度製作・試運転させた装置内に反応部と水の吸着部を設け、そこに温度差を付与することで自然対流を生じさせ、反応流体を循環させる熱駆動循環型ループ式反応装置を用い、DMC合成実験を行った。その際、反応条件を昨年度構築した四成分系(二酸化炭素-メタノール-DMC-水)相平衡推算のプログラムにより決定した均一相条件に選定した。その結果、反応圧力(15MPa)において脱水部(25℃)と反応部(170℃)のいずれにおいても均一相を形成する条件において実験させたところ、従来は1%程度であったDMC収率が最大15%程度まで増大させることができた。触媒量および脱水量依存性に関する検討に加え、反応モデルによる詳細な解析を行ったところ、本装置によるDMC合成では装置内の流体の循環流量がDMC収率に極めて大きな影響を与えていることが判明した。したがって、装置形状を変化させることによりDMC収率を大幅に向上できる可能性が示唆された。
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