研究課題
基盤研究(B)
研究代表者らは、光重合により作製した薄膜フィルムに10ミクロンオーダの規則的縞構造を持たせ、光透過性を90%保持し、視野角依存を持たせることに成功した。このミクロ構造形成は従来から知られているミクロ相分離構造とは全く異なり、光重合過程に発生する事故組織化構造である。用途は色々期待され、例えば、(1)視野角制限フィルム、(2)液晶ディスプレイにおける透過、反射、拡散、偏光等の機能を有する各種部材、(3)光導波フィルム、などがあげられる。さらに優れた機能を実現するために、光重合過程における自己組織化構造形成のメカニズムの解明を目的とした研究を実行した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)照射光強度は弱すぎても、強すぎても構造はできない。(2)重合開始剤濃度が薄すぎても、濃すぎても構造はできない。(3)マイクロラマンの結果、重合度の粗密構造が観察された。(4)ゲル化後に反応速度の極大値にて構造形成が固定化される。さらに、反応光学的解析を実施し、総合的に考察した結果、メカニズムの本質を以下のように考えている。光反応速度定数κは光の強度と開始剤濃度に依存する。しかも、シグモイド関数のように、特定の光強度に対し、変曲点を有する。この結果、一様な光が場に照射されても、光反応で生成するミクロゲル(ポリマー)粒子の光九州と光散乱の結果、場の中に光強度分布が発生する。これは、反応速度定数の光強度の微分値が最大を取ること(変曲点)と対応し、この光強度より低い場合には、空間的に光強度の強い領域と弱い領域に空間的不均一化を起こすことにより、全領域の光反応を促進することができる。このように、光強度分布を引き起こす主体反応生成物(ミクロゲル粒子)であり、この存在が光強度分布をさらに増長させ、正のフィードバックを起こすと考えられる。光重合反応における反応生成物が反応速度に影響を与える自己組織化構造形成と結論付けた。
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