電気化学的原理に基づく微小送液システムおよび、これを用いた微小化学分析システムの研究を行った。本研究では、エレクトロウェッティングおよび電極反応に伴って発生するガスにより駆動する機構を中心に検討を進めた。エレクトロウェッティングによるシステムでは、電極とPDMSの突起構造の間に溶液を閉じ込める。ここで電極の電位を変えると、その濡れ性が変わり、溶液は毛管現象により流路中を進む。複数の電極を流路に沿って並べることにより、複雑な流路ネットワーク中でも、バルブなしで、自由に送液方向を制御できた。これらのシステムを用いて、アンモニア、尿素、クレアチニン、アミノ酸などの濃度を測定する微小化学分析システムを構築した。送液だけでなく、溶液の混合もできるため、酵素等の最適pHで反応を進行させ、高感度に側定を行うことができた。エレクトロウェッティングはバルブを形成するのに用いることもできる。これにより、複数溶液を逐次反応槽に導入する機構などを実現し、チップ上でイムノアッセイを行うことにも成功した。 ガスの生成・消滅を利用するシステムでは、白金黒電極上で水素を発生・消滅させ、ダイヤフラムの変位に変える。ポンプ2個、バルブ4個を集積化したシステムを作製し、Y字型流路で順次溶液を送液・混合した。Amplex redの蛍光を検出することにより、過酸化水素およびL-グルタミン酸の定量を行うことができた。また、同様のポンプを2個Y字型流路入り口に配置したシステムにより、GOT、GPTなどの酵素活性を測定するシステムも実現した。
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