本申請課題では、外部刺激に対して応答するインテリジェント材料として生細胞を利用することにより、薬物や毒物が生体に及ぼす影響を評価できる、新しい概念の環境応答型インテリジェント細胞バイオセンシングシステムの開発を目的としている。 細胞バイオセンシングシステムを構築するためには、細胞とその信号応答を検出する電極との界面の設計が重要である。つまり金属材料である電極の表面上で、いかにして生細胞を接着・培養するかである。このため、電極基板に対して疎水性相互作用により良好に接着する疎水性タンパク質配列に細胞接着部位を導入したタンパク質を設計して、遺伝子工学的に合成した。疎水性タンパク質として、安定なβ-スパイラル構造を形成することが知られているAla-Pro-Gly-Val-Gly-Valのヘキサペプチドからなる繰り返し構造を利用した。また細胞接着部位としては、3つのアミノ酸で細胞表面のインテグリンと接着することが知られているArg-Gly-Asp(RGD)配列を利用した。設計したタンパク質に基づいて対応するDNAを合成し、大腸菌体内の遺伝子発現により目的タンパク質を合成した。得られたタンパク質の材料表面への吸着は原子間力顕微鏡を用いて行った。またこのタンパク質をコーティングした材料表面での細胞接着能を評価した。その結果、このタンパク質は疎水性材料表面に効率よく吸着し、かつ十分な細胞接着機能を有していることが明らかとなった。また細胞バイオセンシングシステムを構成する細胞応答検出部位として、3電極系からなる電気化学測定系を作製した。このシステムで細胞を培養する前に、まずこのセンサのNO応答特性を評価した。その結果、このシステムにより十分な感度でNO測定できることが明らかとなった。
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