研究課題
基盤研究(B)
細胞は基本的に増殖することが可能であり、様々な成長因子などの作用によって分化することもできる。また環境変化による自分自身へのダメージを診断・修復する機構も備えており、細胞の内外で様々な情報伝達を行っている。細胞はこのような自己修復・自己診断・環境応答といった「インテリジェンス性」を持っているため、細胞を材料として用いることにより、きわめて高度なインテリジェントバイオセンシングシステムを実現できる可能性がある。特に細胞の持つ「環境応答機能」は、細胞周辺の物理的な環境変化のみならず、化学物質によっても発現される。本申請課題は、この化学物質による細胞応答を測定することによって化学物質が生体に与える影響を測定する「インテリジェント細胞バイオセンシングシステム」を創出することを目的として行った。前年度まで主として一酸化窒素(NO)を指標として、血管内皮細胞に薬物刺激を与えたときのNO放出挙動を測定することにより、細胞バイオセンシングシステムを作製してきた。本年度の研究では、ここで開発した細胞バイオセンシングシステムの基本原理に基づいてその汎用性を示すため、免疫系細胞とヒスタミンオキシダーゼを組み合わせることにより、アレルギー物質に対する細胞バイオセンシングシステムの構築を試みた。このためまず、ここで使用するヒスタミンの酸化酵素であるヒスタミンオキシダーゼの遺伝子発現・精製を行い、基本的な電気化学的特性を評価した。次いで、本システムでアレルギー物質に応答してヒスタミンを放出する細胞を培養し、この細胞が化学物質刺激により放出するヒスタミンを、オキシダーゼにより酸化し細胞と一体化した電極上で電気化学的に検出した。以上の結果、構築したインテリジェント細胞バイオセンシングシステムが、生細胞に影響を与える化学物質の評価に有用であることが明らかとなった。
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