大腸菌は環境水中の糞便汚染の指標細菌として知られており、その迅速な検出方法が求められている。先にT4e^-ファージのキャプシドに存在するSoc(small outer capsid)タンパク質に緑色蛍光タンパク質(GFP)を提示させたT4e^-/GFPファージを分子構築した。T4e^-/GFP感染後の菌体内で増幅されるGFPの蛍光をとらえることにより、大腸菌K12(W3110)の迅速検出が可能となった。しかしT4は下水流入水中の大腸菌に対して宿主域が狭く、実際の環境水に応用することはできない。そこで、下水流入水中の大腸菌に対してT4よりも広い宿主域をもつT偶数系ファージ(IPOO8、IPO52)を、下水流入水中から単離した。昨年、溶菌酵素をコードするgene e内にgfpを内部挿入することにより、GFPで標識され、かつ溶菌能が欠損した広宿主域ファージ(IPOO8e-、IPO52e-)の分子構築を行った。しかしこれらのファージを大腸菌B^Eに感染させ、蛍光顕微鏡で観察した結果、その蛍光強度はT4e-/GFPと比べて弱かった。本年度は、これら2種類のファージのSocにさらにGFPを提示させた。そしてそれらを大腸菌B^Eに感染させた際の蛍光強度を比較した。 本年度の研究により広宿主域ファージのSocにGFPを融合できた。gene e内にgfpを挿入しただけのファージと比べて、さらにSocにGFPを融合させたファージでは、大腸菌B^Eに感染させた際に強い蛍光強度を示した。特にIPOO8e-/GFPを感染させた大腸菌B^Eは非常に強い蛍光強度を示し、同様の方法でGFPを提示させたファージを用いても、ファージの種類によって大腸菌の蛍光強度が異なることが分かった。
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