研究課題/領域番号 |
16360409
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
堀 克敏 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (50302956)
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研究分担者 |
海野 肇 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (10087471)
丹治 保典 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教授 (00282848)
宮永 一彦 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助手 (40323810)
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キーワード | バイオフィルム / 微生物付着 / セルアペンデージ / DLVO理論 / Acinetobacter / FE-SEM |
研究概要 |
強付着性のトルエン分解能を有するAcinetobacter属細菌Tol5株の固体表面付着機構について研究した。Tol5株の細胞表層構造を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察したところ、ピリ様の周毛性繊維とアンカー様構造の2種類の突起状構造物(セルアペンデージ)を発見した。後者は、これまでに報告例の無い非常に特異的な形状をしていた。長さ数百ナノメートルの直線状で、枝分かれせずに固体表面に向かって真っ直ぐ伸び、その先端で固体表面にくっついている。細胞は表面から数百ナノメートルも離れた位置から、まるで紐でつながれた"風船"のように固定される。通常のSEMにおいては、試料は脱水工程を含む前処理に処さねばならない。したがって、得られた像が前処理の結果生じた虚像である可能性を否定するのは困難である。そこで我々は、前処理を必要とせず、含水試料の観察が可能な最新のSEM技術であるVP-FESEM(日立)を用いて、自然の状態に近い細胞試料の解析を行った。その結果、細胞表層のアンカーおよび周毛性繊維を確認することができ、通常のFE-SEMで得られた像が実像であることが証明された。アンカーによる表面との長距離相互作用は、これまで微生物付着の過程を説明するのに用いられてきたDLVO理論と、そこから推定される二段階付着機構に従わない、新しい付着機構を想定させた。DLVO理論によると、イオン強度が低くなるにつれて静電反発力が強くなり、細胞が表面に付着しにくくなる。そこで、Tol5細胞の付着がイオン強度によってどのように変化するか調べたところ、Tol5の付着はイオン強度に全く依存しないことがわかり、DLVO理論から逸脱していることが明らかとなった。また、非常に短期間で不可逆な付着を達成することから、我々は、新しい付着機構として"一段階付着機構"を提唱した。
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