研究概要 |
抗体遺伝子の変異機能に必須のタンパクAIDの発現を、Cre-loxPシステムを用いて可逆的にON/OFF制御できるニワトリB細胞株DT40-SWを樹立し、この培養細胞集団が形成する抗体ライブラリーから、目的抗体産生細胞を迅速に単離できる新規なinvitro抗体作製技術を開発することを試みた。この方法により,免疫寛容を克服し、親和性成熟機構も組み込んだ効率的な抗体創製が実現できる。また、高機能抗体を作製するための基礎研究として、抗体の親和性成熟に中心的役割を果たす濾胞樹上細胞の株化とその機能解析を試みた。 この研究に関連して以下のような成果を得た。 1)DT40-SW細胞を大規模に長期連続培養し、十分な抗体の多様性を備えたライブラリーを構築している。現段階のライブラリーからランダムに選んだクローンのVH、VLの配列解析を行い、十分広範なレパートリーが形成されていることを確認した。 2)種々の抗原に対する抗体産生クローンを取得し、変異機構をOFFにすることにより、抗原特異性を安定化できることを確認した。このクローンの変異機能を再びONにし、選択を繰り返すことにより更に高親和性のクローンを得た(親和性成熟の実証)。 2)高頻度変異により多様化したB細胞が生体内で選択され、抗体の親和性が増大する過程(親和性成熟)の機構を解明するための基礎研究として、世界に先駆けてマウスリンパ節から濾胞樹状細胞(FDC)の株化することに成功した。このFDC細胞株は、生体内での機能をよく保持しており、B細胞の変異と選択の機構をinvitroで解析するための研究手段として極めて有用と考えられる。
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