研究概要 |
1.無細胞タンパク質合成系の改良 大腸菌由来無細胞タンパク質合成系をさらに汎用性のあるものとするために、5種類の大腸菌シャペロン(GroEL, GroES, DnaK, DnaJ, GrpE)を高発現する高発現する大腸菌を作製した。この大腸菌から調製した抽出液を用いて転写・翻訳共役反応を行った結果、通常の抽出液では活性が認められなかった数種類の酵素が活性型で得られることがわかった。効率よく活性型タンパク質を得られる発現系が構築できた。 2.酵素の進化分子工学的改変 1)キシロース資化関連酵素として、ピロマイセス由来XI(キシロースイソメラーゼ)、高度高熱菌Thermus由来XI、ストレプトマイセス由来XI遺伝子を取得した。上記1.で確立した改良型無細胞系で活性型の酵素が得られた。 2)酵母菌体内での活性が高いとされるピロマイセス由来XIの反応効率向上を目的に、ランダム変異を導入したライブラリーを作製し、SIMPLEX法によるスクリーニングを行った結果、いくつかの陽性候補ウェルが得られた。これらから変異遺伝子を大腸菌にクローニングし、各クローンのアミノ酸配列、酵素活性の評価を行った。その結果、それぞれ1アミノ酸が変異した変異体2種類を得た。2か所の変異を同一遺伝子上に持つ2重変異体を作製し、XI活性を測定した結果、親株の約2倍の活性を示すことがわかった。 3)乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を染色体へ導入した乳酸生産酵母に、さらに酵母由来のXK(キシルロキナーゼ)遺伝子を染色体へ導入した株を宿主とした。1)で得られたXI遺伝子3種類をそれぞれ染色体に導入した酵母を作製した。キシロースを炭素源とした発酵試験を行った結果、カビ由来XI導入酵母では90時間で30%のキシロースが消費されることがわかった。他の2種類のXIでは10-20%程度の消費であった。2)で取得した変異体を同様に酵母へ導入したところ、親株と同程度のキシロース消費率であり、顕著な差は認められなかった。キシルロース以降の代謝が律速になっていると考えられた。 3.メソ多孔体への酵素の固定化 XIを、豊田中研開発のシリカメソ多孔体(FSM、及びSBA)に固定化した結果、細孔系が13nm以上のSBAを用いた場合に4量体であっても固定化できることがわかったが、酵素活性は検出できなかった。
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