環境浄化に有用な生体鉱物を合成すると期待される3種のマンガン酸化真菌を単離し、形態観察およびDNA遺伝子解析にもとついた系統樹を作成し、分類学的位置づけを明らかにした。形態的特徴からは、3種とも不完全菌群に属すると考えられるが、ITS-5.8srDNA遺伝子解析によると3種のうち2種は不完全菌群、1種は担子菌群に属すると考えられる。それぞれの菌によるマンガン酸化特性について、最適条件の決定、マンガン濃度耐性などを明らかにした。3種のうちの2種の菌のマンガン酸化反応の至適pH、従来報告されているマンガン真菌のものよりもやや酸性側にあった。通常、マンガン酸化真菌によるマンガン酸化反応は進行に伴いpHが低下していくため、このことは高濃度マンガンを処理する上では有利な性質であるといえる。また、より酸性側に至適pHを有する菌につき、酸化可能なマンガンイオンの上限濃度を調べたところ、240ppmでも十分な速度で酸化を起こすことがわかった。この濃度はこれまで報告されているマンガン酸化真菌による酸化可能な上限濃度の記録を更新する値であり、鉱山廃水などの高濃度処理への応用にとってはきわめて有利な性質であるといえる。 上記の菌により合成された生体鉱物の分光学的特性、形態特性、粉体物性について検討したところ、多孔性に富み、4nmに特化した細孔分布をもつ粉粒体であることがわかった。このようなメソポア構造はきわめて珍しく、環境浄化材料への応用が期待される。
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