研究概要 |
マンガン酸化真菌の単離株であるParaconiothyrium sp.様真菌により合成したマンガン酸化物は、低結晶性でありながら、birrnesite(Na_4Mn(III)_6Mn(IV)_8O_<27>・9H_2O, JCPDS 23-1046)に近く、構造中にMn(III)およびMn(IV)を含む。また、化学合成によるマンガン酸化物は完全なMnO_2であり、構造中のMnにはMn(IV)しかもたない。Co(II)の収着実験ではどちらの酸化物表面でもCo(III)として酸化されたものとして検出され、酸化還元反応をともなった収着であることはあきらかであった。Co(II)収着過程においてはMn(II)の溶出がみられた。化学合成酸化物からは、イオン交換型のMn(II)の脱離のみであったが、とくに生体鉱物からは、イオン交換型のMn(II)の脱離のみならず、Mn(III), Mn(IV)を電子受容体とした酸化還元反応によるMn(II)の脱離がみられた。Mn(II)溶出量の経時変化から、Mn(IV)を優先的に電子受容体としながら、次第にMn(III)も電子受容体として利用していく変遷の傾向が認められた。生体鉱物の表面には不規則な結晶構造中の空隙が存在し、重金属イオンはそのようなサイトに吸着されやすいと考えられる。そのあと、Co(II)の場合には、隣接するMn(III)およびMn(IV)と酸化還元反応を起こす。Co(II)が酸化されて、Co(III)を生成するときにMn(IV)が電子受容体として使われれば、Mn(III)-OOHとして、なお固相表面にとどまっているが、Mn(III)が電子受容体として使われ出すと、Mn(II)を溶液中に放出する。このようなことは、化学合成酸化物ではみられない点で、マンガン酸化生体鉱物の特徴といえる。
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