原位置地下水浄化技術である透過型浄化壁のカラム試験において、嫌気性菌である硫酸還元菌やセレン還元菌の寄与を確認した。カラム解体後の試料のSEM-EDXによる直接分析から硫酸は硫化物となっていることが示唆され、処理前後の水のイオウ同位体比分析から、σ^<34>Sの減少を確認したことにより、硫酸還元微生物による影響があると判断した。この反応にともなって地下水中のヒ酸や鉄以外の重金属イオンが硫化鉄とともに共沈する効果がある。また、硫酸還元菌が硫酸還元反応をおこなう際に、炭素源が分解され、アルカリ度を上昇させる。その結果、重炭酸イオンが天然水に普遍的に存在するCa^<2+>、Mg^<2+>イオンと反応し炭酸塩が析出し、これらと地下水中汚染物質であるヒ酸イオンが共沈することもカラム解体後の試料のSEM-EDXによる直接分析から推定できた。このとき、ヒ酸イオンは単体ヒ素やヒ化物とはならず、ヒ酸あるいは亜ヒ酸の状態で透過型浄化壁の活性物質の表面に不動化されることをX線光電子分光法(XPS)により確認した。一方セレン還元菌によるセレン酸の不動化では、セレン酸や亜セレン酸ではなく、単体セレンとなって不動化されることをX線光電子分光法(XPS)およびラマン分光法により確認した。好気性菌であるが準表層環境で機能するマンガン酸化菌がもたらすマンガン酸化生体鉱物については形態や化学状態に化学的酸化物にはない特徴があり、それに起因した他の重金属濃集挙動(選択性、酸化還元反応、収着サイト)あることがわかった。この生体鉱物に対する重金属イオン収着選択性については工学的応用の可能性を見出した。
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