研究概要 |
本研究は、超小型放電型D-^3He核融合装置による高性能小型陽子源の開発を目的に、現在米国ウィスコンシン大学で達成されているプラズマの慣性静電閉じ込め(IECF)方式による陽子発生率をさらに発展させることを目指すものである。40年近くにわたるIECF研究においてもD-^3He核融合反応については黎明期にあり,つまり,ウィスコンシン大学におけるD-^3He核融合反応由来の高エネルギー陽子の観測に留まっており,その発生空間分布はもとより,その総発生率でさえも定量されていないD-^3He核融合陽子源の高出力化,実用化に向けては,IECFにおけるD-^3He核融合の物理の理解と,現行IECFをベースとした新たな装置概念の創出が不可欠である. このため,本研究では,超小型IECF装置の簡便性、安価性を保持しながら飛躍的高出力化を計るため、マグネトロン型イオン生成部を付加した新たなIECF概念を提案している.昨年度は,この新方式の優秀性をD-D反応実験で示すと同時に,D-D反応生成陽子(3MeV)と比して遙かに高い15MeVのD-^3He反応陽子の空間分布計測を可能とする陽子計数装置等を準備した.最終年度の今年度は,これらを用いてD-^3He反応実験を行い,以下の成果を得た. ・運転条件(印加電圧やD_2-^3Heガス混合比)に対する核融合反応率の依存性を調べ,最適な条件を実験的に示すと同時に,その理論的根拠を示すことができた. ・D-^3He核融合反応陽子の発生空間分布を同定する計測・解析手法を確立した. ・もって,D-^3He核融合の空間分布と,体積積分した総反応率を定量することに成功した. ・空間分布計測の結果,具体的には,(1)D-^3He核融合反応陽子はプラズマ中から57%,電極表面から43%発生していること,(2)プラズマ中から寄与分は,装置中心部に集中していることが判明した.これらの結果は,ウィスコンシン大学での先行研究等からの否定的な予測に反して極めてencouragingな結果であった.
|