本研究は、多層の微細加工技術を十分に活用し、検出器中での信号のエンコーディングを行うことで、エレクトロニクスの規模を1桁以下にまで抑え、従来実現の困難であった大面積・高速・高位置分解能な2次元位置敏感型ガス比例計数管を開発しようとするものであり、本年度は電極構造の詳細について検討を行った。多層基板技術をMSGCに用いる場合は、アノードに高電圧を印加する必要があるので、多層配線の絶縁部分の耐圧がもたず、アノードの下や近傍が配線禁止領域となるが、本研究ではエンコード法を用いることによって配線禁止領域の問題をクリアすると同時に読み取りエレクトロニクスの規模を激減させる構造を考案した。アノードはスリットで2つのストリップに分かれ、それぞれがアノード近傍の電場で電子雪崩により生じた電荷のうち、半分づつを収集する。カソード側は、半分づつの電荷を受け取る2種類のパッドに分割され、下層の配線へ接続される。本年度はこの構造についての電場計算を進めるとともに、実際に小型の検出器を試作し、その原理の確認を行った。まず、アノードをスリットで分割する新しいスプリット型アノードについては、問題なく動作することが確認された。ただし、端部においてはビームが有感領域外から当たった場合に2つに分割されたアノードの各々の信号の大きさが若干異なることが観察された。一方、有感領域内で動作させた場合には特に問題は生じない。また、カソード側をパッドに分割する点についても粗い位置同定と、細かな位置同定の2つの信号を組み合わせて位置検出が可能なことが実際に示された。なお、この過程で、よりエレクトロニクスを減少させる方法として、幾何学的な電荷分割方式との併用することを新たに考案し、基礎的な実験を行い、その原理の確認を行った。
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