研究課題
基盤研究(B)
大気中トリチウムの地表面への沈着過程の中で、土壌によるトリチウムガスの酸化速度の評価のために、酸化速度が水素ガス濃度に依存しない高濃度領域(数100〜1000ppm)で、トリチウムを模擬した水素同位体ガス(H_2及びD_2、以下水素ガス)の酸化実験を行った。密閉容器内に土壌と既知量の水素を含む空気を入れ、水素ガス濃度の減少量から酸化速度はを評価し、水素ガス濃度はGC(TCD)により測定した。本年度は冬季に採取した畑地土壌を対象に酸化速度の土壌水分量依存性を評価した。予備実験によると、暴露時間とともに酸化速度が減少することが明らかとなった。これは高濃度の水素ガスを長時間曝露することにより、菌の活性が低下したためと思われる。本実験では酸化速度が低下しない範囲で土壌含水率依存性を評価することとし、曝露時間を1時間程度とした。密閉容器内の水素ガスの減少が酸化菌に由来するものかを確認するため、土壌を加熱乾燥させ、その土壌にD_2曝露実験を行った。加熱乾燥土壌は自然土壌より酸化速度が2桁程度小さいことから、密閉容器内の水素ガスの減少は酸化菌による酸化であると考えられる。畑地土壌に対する曝露実験を行ったところ、D_2とH_2の酸化速度は類似の土壌含水率依存性を示し、10%w/w程度まで土壌含水率とともに増加し、10%w/w前後で最大となり、それぞれ2×10^<-8>及び3×10^<-8>mol g^<-1> h^<-1>であった。10%w/w程度以上では土壌含水率とともに緩やかに減少した。酸化速度の増加は菌の活性度の上昇、減少は菌の活性の低下もしくは酸化菌周辺での輸送過程の阻害に由来すると考えられる。また、酸化速度はD_2に比べてH_2の方が大きく、同位体効果が存在することが明らかとなった。酸化速度の比の平均は1.3であった。
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Journal of Environmental Radioactivity 79
ページ: 137-156
Journal of Radionanalytical and Nuclear Chemistry 262
ページ: 569-572