研究課題
大気中トリチウムの地表面への沈着過程の中で、土壌によるトリチウムガスの酸化速度の評価のために、広い濃度範囲(10〜1000ppm)で、トリチウムを模擬した水素同位体ガス(H_2及びD_2、以下水素ガス)の酸化実験を行った。密閉容器内に土壌と既知量の水素を含む空気を入れ、水素ガス濃度の減少量から酸化速度はを評価し、水素ガス濃度はGC(TCD)により測定した。本年度は夏期および冬季に採取した畑地土壌(黒ボク土)を対象に酸化速度の濃度依存性および温度依存性を評価した。酸化速度の濃度依存性については、Michaelis-Menten速度則で良好に近似される飽和曲線を示し、約500ppmでほぼ最大酸化速度に達することが示された。酸化速度の温度依存性については、-10から80℃の範囲での実験結果から、1)酸化速度が最大値を持つ至適温度が存在し(夏期採取土壌:46℃、冬季採取土壌:42℃)、2)至適温度以上では酸化速度が急激に減少することが示された。また、3)一旦至適温度を大幅に超えた土壌は至適温度以下に温度が下がっても酸化速度が回復しないというヒステリシスが存在することが示された。4)これらの実験からMichaelis-Menten速度式のパラメータの温度依存性を評価した結果、アレニウスの反応速度則にほぼ従うことが示され、酸化速度をこれらの理論式を基にした実験式としてモデル化できた。また、5)酸化速度はD_2とH_2で異なり、H_2が最大速度で約1.6倍大きいことが示された。但し、個々の測定結果には比較的大きな誤差が含まれているため、本年度導入して調整中の微量還元性ガス分析計を用いて高精度の実験を今後行う。地表面トリチウム移行評価のための植物キャノピーモデル開発については、土壌およびキャノピー大気を多層に分けた既に基本開発済みの1次元大気-土壌-植生モデルSOLVEGをCO_2大気-キャノピー交換に適用し、大気-キャノピー交換量およびキャノピー内放射伝達等のその他の物理量輸送を良好に再現できることを確認した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
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