研究課題
大気中トリチウムガスの地表面沈着速度の実測値は、従来研究では0.01〜1mms-1程度の大きな幅を持っている。本研究では、土壌の水素ガス酸化能に関する実験的研究を行うとともに、トリチウム移行の理論モデル構築および数値モデル化により沈着速度を評価する方法を開発し、最終年度の総括として過去の屋外実測値との比較により評価方法を検証した。実験室内で土壌による水素同位体ガス酸化速度の評価を行なった結果、昨年度までに黒ぼく土で得られた1)基質濃度依存性、2)土壌含水率依存性、3)土壌温度依存性、および4)H_2-D_2間同位体効果は畑地および水田から採取した灰色沖積土でも同様に見られ、土壌種間での酸化速度の比は0.7-1.5と小さく、何れの土壌でも酸化速度の土壌因子への依存性は黒ぼく土で提案した関数によって良好に表されることが示された。また、低濃度(1ppm)では酸化速度の同位体による小さいことが示された。これらの結果をもとに、HT酸化速度の評価式を提案した。大気境界層理論および大気-地表面間のCO_2やラドン等の物質交換に関する研究を基に、沈着概念モデルおよび上記のHT酸化速度評価式と組み合わせた1次元数値モデルを開発した。カナダのチョークリバーで行われた野外トリチウム放出実験に対して、本研究で開発したモデルを適用してトリチウム沈着速度を求めた結果、モデルにより計算された土壌抵抗は約3000〜5000sm-1の値であり、大気抵抗より一桁大きく、実験は土壌抵抗が律速の状態で行われたことが示された。モデルにより計算された沈着速度はファクター0.9〜1.9の範囲で屋外実験での測定値と一致しており、本モデルにより風速、安定度、土壌含水率からこの精度で沈着速度を推定できるものと考えられる。このモデルを用いて土壌含水率等の簡単な関数として沈着速度の実用的な評価式を提案した。
すべて 2006
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