研究概要 |
本年度は、温度勾配をつけた溶融塩を用いて昇温速度を制御したグルコース水溶液の分解反応を25MPaで進行させ、その出口流れをHPLC-MS分析することによって生成物を確認した。溶融塩は電気炉の中に設置し、高さ方向3つの電気ヒータで温度を制御できるようにした。加熱によって塩を溶解させた後、上部のみの加熱に切り替えて温度成層を形成し、底部が150℃程度、上部が400℃となるように設計した。この中に、内径1.09mmのステンレス管をコイル状に設置した。原料を反応器を通して溶融塩の底部から上部に向けて流すことによって、周囲の溶融塩の温度に支配されたかたちで昇温が行われる。温度勾配を把握した上で、コイルの巻き数を変えることによって昇温速度を制御した。代表的な場合として、昇温速度範囲が0.46-3.85K/sの場合と0.88-1.64K/sの場合について比較を行ったが、この温度ではガス収率は低く、原料中の炭素は液層に残っていることが確認された。また、HPLC-MSによる生成物分析のために、各代表的な物質について保持時間と代表的なm/zの値を確認した。これに基づいてHPLC-MS分析を行い、昇温速度がおそい場合に、タールの前駆物質と考えられる1,6-アンヒドログルコースならびに5-HMFの収率が高くなることを確認した。昨年度得られた反応速度定数からも、昇温速度が小さい場合に5-HMFや1,6-アンヒドログルコースが多く発生することが確認されており、実際の超臨界水ガス化の予熱部を模擬した実験で、昨年の結果の妥当性がさらに確認された。
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