バイオマスの超臨界水ガス化ならびに水熱前処理において、昇温過程におけるタール成分の生成は重要な要素でありながら、その機構については十分な知見が得られていない。本研究においては、グルコースをモデル化合物として選択し、流通式反応器を用いてその水熱条件における反応を進行させ、所定の温度と滞留時間におけるフルクトース、エリスロース、グリセルアルデヒド、アンヒドログルコース、5-ヒドロキシメチルフルフラールなどの生成物の分析を行った。さらに、既往の研究を参考として反応ネットワークを確定し、各反応速度式のアレニウスパラメータを最小自乗法によって決定した。その結果、グルコースの分解反応の反応次数が温度と共に変化することを確認し、反応場の雰囲気によって主要な反応経路が変化していることを示唆する結果を得た。さらに決定された反応速度パラメータを用いて昇温速度を変えた時の生成物の変化を追った所、昇温速度がおそい場合に5-ヒドロキシメチルフルフラールの収率が高くなることを確認した。実験的に昇温速度を変えた場合の生成物の変化を確認した結果、昇温速度が小さいほどタール成分が生成する結果を得、さらに水溶成分の分子量分布の分析から、分子量が120程度の物質が重合していることが推測された。既往の糖の加熱に関する研究において、分子量が126である5-ヒドロキシメチルフルフラールが着色の原因物質として指摘されており、本研究の知見からも、5-ヒドロキシメチルフルフラールの重合がタールの生成に寄与していることが強く示唆される。
|