本研究の最終目的は、林業県である岩手県の地域特性を生かして、余剰となっている木質バイオマスを燃料としたスターリングエンジンによる新しい分散型電源システムを構築し、コージェネレーションシステムとしての実用可能性について明らかにしていくことにある。 本年度は木質バイオマス燃料に最適なスターリングエンジンを設計し、実用スターリングエンジンを製作することを目標としてきた。設計・製作においては、特に加熱器と冷却器、および再生器の伝熱性能の向上に努めた。平成17年2月には、実用型スターリングエンジンの国産1号機を、産学官連携の取り組みで完成させた。エンジンは大きさ450×450×1200mm、重さ200kgで、5馬力(650rpm)の軸出力が得られた。作動ガスに空気を使用しているため取り扱いも容易で、ピストンリングにも特殊な材質を採用して無潤滑運転を可能とし、長期メンテナンスフリーを実現した。現在、発電機を接続して発電を行ないつつ、冷却水による熱回収も行うコージェネレーションシステムを構築して、性能試験を繰り返している。現在のところ発電端出力で約2.8kW、温水の回収で約13kWの実験結果が得られており、総合エネルギー効率で約50%に相当する。 この開発で製作が可能となった実用スターリングエンジンは、エネルギー消費の低減ばかりではなく、その応用範囲が大きいために地域の新産業の創出に繋がることが期待されている。すでに、八ヶ岳赤岳鉱泉の山小屋の廃棄物処理への利用も計画されて、生ごみ等残渣の小型ガス化燃焼炉とスターリングエンジンの組合せによるコージェネレーションシステムが実験段階に入っている。 本年度は、スターリングエンジンとの組合せが最適なチップボイラーやペレットボイラーの開発、組合せを検討し、さらに総合エネルギーの向上を図っていく計画である。
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