研究概要 |
プロテアソームは生物に普遍的に存在する巨大な蛋白質分解酵素である。活性中心を含む基本構造が20Sプロテアソームであり、7つのサブユニットからなる二種のリングαとβがαββαの順に積み重なったシリンダー状構造をしていることが知られている.原核生物のプロテアソームでは、αリングを構成するサブユニットおよびβリングを構成するサブユニットはそれぞれ1種であるのにたいして、真核生物では、7種の異なったサブユニットが一つのリングを形成している。真核生物のプロテアソームの特徴は、20Sプロテアソームのシリンダー構造の一つあるいは両方の端に19S RPとよばれる調節因子が会合し26Sプロテアソームを形成することがプロテアソームの機能に必須であることである.26Sプロテアソームがユビキチン・プロテアソーム系の蛋白質分解マシンとして働く.本申請課題の目的は出芽酵母を用いて26Sプロテアソームの生物学意義を明らかにすることであるが、短期目標として、19S RPの集合機構の解明を掲げている.特に、これまで未解析のサブユニットの機能を明らかにするために、その遺伝子の温度感受性変異体を分離し、制限温度でのサブユニットの集合状体を解析することにより、サブユニットの会合の順序を解明することを目指している.本年度はRPN7とRPN6について解析した。RPN11-3FLAG rpn7-3変異体を制限温度下に6時間おいた後、細胞抽出液を調製しゲルろ過したところ、野生型細胞には見られない複合体が形成されていることがわかった。野生型細胞抽出液から抗Flag抗体で免疫沈降する蛋白質複合体は26Sプロテアソームであるのに対して、rpn7-3変異体細胞から同様の処理によって得られる複合体は19SRPの一部のサブユニットから成るもので、その組成を明らかにした、Rpn5,Rpn6,Rpn8,Rpn9、およびRpn11であった。RPN11-3FLAG rpn6-1で同様の実験をおこなったところ、Rpn5,Rpn8,Rpn9、およびRpn11から成る複合体が得られた.Rpn9は無くても細胞は生育できるので、中心的なサブユニットはRpn5,Rpn8,およびRpn11であると考えられる.rpn5温度感受性変異体を調べたところ、複合体の形成が見られなかったことは、上の考えを支持している。今後、rpn8およびrpn11についても同様の解性を行う.サブユニットの会合が細胞内の何処で行われるかを明らかにするためにGFP融合サブユニットを用いて局在の解析も進行中である.
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