温度走性に関与するEAT-16/RGS遺伝子は、Gαタンパクの負の制御因子であり、線虫の主要なAFDニューロンではなく、嗅覚ニューロンとして研究されていたAWCで機能することが明らかになった。そこで、本研究代表者らが以前提唱した温度走性神経回路モデル(Mori and Ohshima model)における未同定温度感覚ニューロン(X)が、AWCニューロンであるかどうかを、まず、レーザー照射による細胞破壊実験により検証した。温度受容ニューロン(X)がAWCであれば、eat-16(nj8)機能欠損型変異体は、そのAWCニューロンが過剰に活性化しているために好冷性温度異常を示すと考えられる。レーザー照射により、eat-16(nj8)変異体のAWCニューロンを殺傷された個体は、好冷性異常を示さなくなったことから、未同定ニューロン(X)は、AWCである可能性がより高くなった。そこで、野生型個体のAFDとAWCの両方のニューロンをレーザーで破壊したところ、完全に温度に対する応答性を失った。従って、C.elegansは、温度受容ニューロンとして、主要な役割を担うAFDの他に、補助的な役割を担うAWCを持っていることが示唆された。次に、AWCにおけるRGSの標的となるGαの検索を遺伝学的に行なった。AWCで発現するGαは7種類存在し、すべての機能欠損変異体が単離されている。そこで、eat-16とGα変異との2重変異体を作成し、eat-16の好冷性異常を抑圧するかどうかを調べたところ、ODR-3Gα変異のみがほぼ完全にeat-16の好冷性異常を抑圧した。また、同様の遺伝学的解析により、ODR-3の下流では、ODR-1 guanylyl cyclase、TAX-4 cGMP-gated channelが温度受容のシグナル伝達経路の構成因子であることが示唆された。
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