研究概要 |
本研究は,分裂酵母をモデル実験系として,真核生物における相同組換えによるDNA修復機構の全体像を明らかにしようとするものである。我々が同定した新規組換え遺伝子Swi5/Sfr1については、特に注目しており、タンパク質を精製し、試験管内で解析し,生化学的機能を明らかにしようとしている。本年度は,以下の成果を得た. (1)試験管内組換え反応系の構築 Rad51,Rad22,RPA, Swi5,Sfr1タンパク質のリコンビナントによる発現系および精製法を確立した。Rad51の試験管内鎖交換反応を確立した。さらに、Swi5とSfr1が安定なタンパク質複合体を形成し、DNA結合能を有することを明らかにした。 (2)Rad22タンパク質の試験管内SUMO化反応系 分裂酵母のSUMO化酵素、E1,E2,E3をリコンビナント系を用いて発現精製し、試験管内SUMO化反応系を構築した。これを用いて、Rad22の試験管内SUMO化反応に成功した。 (3)DNA二重鎖切断修復産物をモニターする系の構築 T.Humphreyの開発した実験系を改良して、DNA二重鎖切断修復産物をモニターするシステムを構築した。すなわち、このテスター株は、HOエンドヌクレアーゼで1ヶ所DNA二重鎖切断を誘導できるミニ染色体を有し、修復産物を栄養要求性とG418耐性によって分類した後、パルスフィールド電気泳動による解析によって、遺伝子変換型、交差型、非相同末端結合型などに分類することができるものである。今後、各種組換え変異による修復産物の解析を行う予定である。 (4)Nbs1遺伝子のドメイン機能解析 Nbs1の、FHA, BRCT,及びMre11結合ドメインを欠く短縮変異株の解析から、紫外線や電離放射線による損傷の修復には、BRCTが必須でないことを明らかにした。
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