研究課題/領域番号 |
16370010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 勲夫 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30107453)
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研究分担者 |
小川 浩史 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (50260518)
原 成光 宮崎国際大学, 比較文化学部, 教授 (50261243)
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キーワード | マリンスノー / 海洋表層密度躍層 / 大型懸濁粒子 / 凝集過程 / 植物プランクトン / 生物過程と物理過程の相互作用 |
研究概要 |
マリンスノーは海洋表層から海洋深部への有機物の鉛直輸送に重要な役割を果たしていると考えられているが、その壊れやすい性状から物質循環に関する研究はアクセスが容易な沿岸域に比較的限定され外洋域での解析は乏しい。本研究では外洋域でのマリンスノーの主に物理的な環境と生物活動との相互作用を解析するため、マリンスノーカメラ〔>0.5mm〕と10-500ミクロンまでの粒子分布を計測するLISST-100を併用し、表層の密度躍層を中心とした大型粒子の動態解析を行なった。18年度の成果として中部太平洋の南緯10度から北緯50度までの表層生態系の異なる観測ラインでの観測を解析した結果を中心に以下にまとめる。(1)これまで沿岸域では密度躍層付近に大型懸濁粒子の極大が観測されていたが、外洋域でも植物プランクトン生産が比較的高い中緯度海域では表層でのマリンスノーの現存量のピークの多くは密度躍層付近に存在することが確認された。(2)表層200mまでのマリンスノーの現存量は、亜寒帯域では貧栄養海域に比べて体積で約50倍高く、この違いはマリンスノーの主な起源である植物プランクトンの現存量のこれらの海域での違い(2.5倍)より1桁以上高い。この表層でのマリンスノーの現存量は、水塊の鉛直構造とともに、栄養塩の量と質を反映した植物プランクトンの現存量だけでなく、その種類、サイズさらには低次の食物連鎖などにより、支配されていると考えられる。(3)南緯10度から北緯50度までの海域での密度躍層はほぼ30mから80mの間にあったが、マリンスノーの0-100m、100-200mの現存量の比は、この2つの表層区分におけるクロロフィルの現存量の比と良く一致した。この結果は表層で主に1-100ミクロンのサイズの植物プランクトンを起源として生成されるマリンスノーは、鉛直的に大きく移動することなく0.5mm以上の粒径を持つマリンスノーまで変化していることを示唆している。
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