研究概要 |
河川の微生物膜内の細菌の現存量と多様性の変化を,他の環境要因と関連付けて考察した。細菌の現存量は,12月から2月の冬季に高くなる傾向が得られたが,細胞体積には明確な季節変動が得られなかった。どの季節においても優占したのは,球菌,棹菌,湾曲棹菌であった。原生生物細胞密度と細菌細胞密度,あるいは原生生物細胞密度と優占した各々の細胞形態の細菌の細胞密度との間には,順位相関解析で有意な相関が得られた。多様度指数の解析からは,多様性を高めているのは優占していない形態タイプの細菌であることが示された。 水生昆虫に微生物膜を摂食させ,微生物膜の水平構造(不均一性)に及ぼす影響を調べた。その結果,ヒラタカゲロウは付着藻類現存量を均一に減少させ,不均一性を下げる一方で,マルツツトビケラは摂食痕を残して付着藻類マットをパッチ状に改変し,不均一性をあげることが判った。このことから,付着藻類の不均一性に及ぼす影響は,水生昆虫種によって全く逆になりうることが明らかとなった。 水生昆虫が付着藻類の匂い物質を摂食行動に利用している可能性について調べるため,実験を行った。ヤマトビケラの資源タイルへの移動を評価したところ,付着藻類の現存量に対応して有意に増加した。このことから,ヤマトビケラは付着藻類の何らかの匂い物質を介して,資源タイルへ辿り着いていることが示唆された。 微小生物膜の構造に大きな影響を及ぼすと考えられる環境要因の1つに,河川水中のシルトが挙げられるが,これに関する実証的な研究例はほとんどない。2月17日現在,本実験に備えた水路のコンディショニングを行っているところである。
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