研究概要 |
河川水に含まれるシルト粒子等の懸濁粒子が,微生物膜形成に及ぼす影響を調べるために,懸濁粒子を含む水と含まない水をそれぞれ流した人工河川において微生物膜の形成過程を追った。懸濁粒子は,炭化珪素を用いた。その結果,懸濁粒子を含む人工河川では微生物膜中に含まれるクロロフィルa量が実験期間を通して増加したのに対し,懸濁粒子を含まない人工河川ではクロロフィルa量が実験期間途中から減少した。この結果は,懸濁粒子が微生物膜を校正する付着藻類の細胞間を埋めることにより、より厚い微生物膜の形成を助けるためであると考えられる。 上流にダム湖を有する河川において、河川水中の藻類(付着藻類および植物プランクトン)の現存量と組成、水生昆虫の現存量と組成、および水生昆虫の消化管内容物から,各種水生昆虫による各種藻類に対する摂食選択性を評価した。その結果、Filter-feederのみならず,ScrapersやCollector-gathererの水生昆虫までもが,付着藻類だけでなくダム湖から流出した植物プランクトンも摂食していることが明らかとなった。また、河川水中に多く存在する植物プランクトンや付着藻類の種は水生昆虫の消化管内容物中で優占するケースが多く見られたが,中には特定の植物プランクトン種を選んで摂食している水生昆虫も存在した。 水生昆虫の餌探索行動に付着藻類のケミカルキューが寄与している可能性について調べるため,野外に循環型実験水路を作成した。本年度は揖斐川水系牧田川のヤマトビケラを用いて予備実験を行い,水路・実験個体群が本実験に使用可能であることを確認した。付着藻類などの微生物膜に対する水生昆虫の摂食影響・捕食を介した間接影響を検証するためには,対象とする水生昆虫のバイオマスを知る必要がある。そこで,水生昆虫に限らず,日本の河川に生息し実験に用いられることの多い水生生物全般を対象とし,頭幅・体長・体幅・脚長等から重量を求める換算式を得た。
|