研究概要 |
以下の4つの研究について、学術論文による研究成果発表を行った。 1.河川の微生物膜内の細菌の現存量と多様性の変化を、他の環境要因と関連付けて考察した。原生生物細胞密度と優占した各々の細胞形態の細菌の細胞密度との間には,順位相関解析で有意な相関が得られた。多様性を高めているのは優占していない形態タイプの細菌であることが示された。 2.水生昆虫に微生物膜を摂食させ、微生物膜の水平構造(不均一性)に及ぼす影響を調べた。ヒラタカゲロウは付着藻類現存量を均一に減少させ,不均一性を下げる一方で,マルツツトビケラは摂食痕を残して付着藻類マットをパッチ状に改変し,不均一性をあげることが判った。 3.微小電極による超マイクロハビタットの環境測定を行い、河川において、河床の石表面に近付く薄い層(厚さ100μm以下)では流速がほとんど無くなるかゼロとなる層(粘性境界層)の存在を実証し、微生物膜の構造および基質の表面特性により、微生物膜内部の物理・化学環境が異なることを示した。 4.河床の細菌の生産は、付着藻類が生産した内因性有機物と、河川周囲の陸上植物等に由来する外因性有機物の、2つの有機物供給に依存している。我々は、河川微生物膜中の細菌の生産にとって、外因性有機物の供給が重要であることを示した。 5.河川の水生昆虫が各種の付着藻類および上流ダム湖で発生した植物プランクトンを選択的に摂食しているか調べた。filter-feedingの水生昆虫は、ダム湖で発生した緑藻のPediastrumや珪藻のSynedraに対して高い摂食選択性を示した。 6.水生昆虫の餌探索行動に付着藻類のケミカルキューが寄与している可能性について調べた。懸濁水・溶存水それぞれをコントロールと対応させた組み合わせ実験から、水生昆虫は付着藻類キューのある方向へ有意に移動することが分かった。また、溶存水よりも懸濁水を選択する傾向が見られたことから、水生昆虫は視覚と嗅覚の両方を利用していることが明らかとなった。
|