研究概要 |
本研究では細胞増殖の活性化に結びつく細胞周期の制御機構に焦点をあてて、その分子ネットワークとサイトカイニン情報伝達との関連性を明らかにすることを目的とする。シロイヌナズナの4種類のCDK活性化キナーゼ(CAK)(CDKD;1〜CDKD;3,CDKF;1)はCDKF;1→CDKD;2/3→CDKというリン酸化カスケードを構成することが示唆されている。そこで、本年度はこのカスケードの上流でサイトカイニン情報伝達が機能しているか否かを検証するために、まずシロイヌナズナの根からプロトプラストを調製し、トランジェントアッセイ系によりCAKのもつキナーゼ活性を解析するシステムを確立した。サイトカイニン情報伝達はレスポンスレギュレーターの一つであるARR4を介して光シグナルともクロストークしている。そこで、CAKの光応答について解析した結果、CDKF;1は暗所で発現が増大し、フィトクローム変異体phyBでも発現が上昇していることが明らかになった。一方、CDKD;1〜CDKD;3においては変化を観察できなかった。CDKF;1の活性制御因子を探索し上流シグナルとの関連性を解析するために、TAPタグを付加したCDKF;1を過剰発現する形質転換植物を作成し、複合体精製のための予備実験を行った。 一方、G1/SやG2/Mの移行期に重要な役割を果たすサイクリンA3やWeelキナーゼについても基礎的な機能解析を開始した。サイクリンA3についてはセンス・アンチセンス形質転換植物を作成すると同時に、細胞周期における発現変動について解析した。その結果、4種類のサイクリンA3が異なる発現パターンを示すこと、またCycA3;1の過剰発現が細胞分化に影響を与えることが明らかになった。また、WeelのmRNAレベルの発現応答について解析した結果、植物ホルモンとともにショ糖に対する応答性も示すことが明らかになった。
|