(1)サイトカイニンによって活性化されるARR1(転写因子型応答因子)の直接標的遣伝子を網羅的に解析するたあ、ステロイドホルモンで人為的に活性化できる改変ARR1を利用して、これまでMicroarray法によって解析してきた。しかし転写量に少なくとも2倍以上の差異がないと有意な結果が得られにくいことが判明した。今回新たに、HiCEP法を利用して1.3倍程度の差異を検出することで標的遺伝子を探索する実験系を確立し、これまでに知られている非転写因子型応答因子遺伝子以外に、幾つかのMyb、bHLH、AP2、GATAタイプの転写因子やP450、感染防御関連タンパク質、代謝関連酵素をコードする遺伝子群が標的候補として得られた。これらのうちの一部は、タンパク質合成阻害条件下でのステロイドホルモン誘導実験からARR1の直接標的遺伝子であることを確認した。 (2)シロイヌナズナにはARR1と類似の転写因子型応答因子が11種類存在するがそれぞれがサイトカイニン応答にどの程度寄与しているかを明らかにするために、ARR1の活性化あるいはARR1遺伝子の欠損によって各非転写因子型ARR遺伝子のサイトカイニン誘導がどのように影響されるかを解析した。その結果ARR1は全ての非転写因子型ARR遺伝子のサイトカイニン誘導を引き起こす潜在能力を有するが、植物固体内で実際にARR1が発現誘導に寄与する程度はそれぞれの非転写因子型応答因子遺伝子間で異なっていた。今後この差異がARR1とそれぞれのプロモーター領域との親和性の違いによるのか否かを明らかにする予定である。 (3)サイトカイニン受容体からARR1へのシグナル伝達の実体がリン酸リレーであることを確認するためin vitro系を開発途中である。それぞれのタンパク質成分を大腸菌で過剰発現させることを試みたが膜結合ドメインを含むタンパク質については満足する結果が得られていない。さらに昆虫培養細胞の系で過剰発現する系を開発中である。
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