研究課題
サイトカイニンによって活性化される応答因子型転写因子ARR1を植物個体内で人工的に活性化し、ARR1の標的遺伝子を、Microarray法、HiCEP法、およびNorthern解析により網羅的にスクリーニングした。その結果、ARR1は様々な制御機能を有するタンパク質群の遺伝子(23ヶ)の転写誘導にかかわることが明らかになった。これらのほとんどがサイトカイニンの初発応答遺伝子であり、また少なくとも17遺伝子に関しては、arr1-1変異株中でのサイトカイニン応答が低下した。この低下の程度は標的遺伝子によってばらつきがあった。以上の結果から、ARR1を含むタイプB-ARR応答因子(シロイヌナズナでは全部で11種存在)がサイトカイニン初発応答遺伝子のほとんど全ての転写誘導に関わっていることが明らかとなった。これまで植物のサイトカイニン応答生理反応が非常に多岐にわたっていることから、CRE1を含む3種の受容体ヒスチジンキナーゼからARR1を含む11種のタイプB-ARR応答因子へのシグナル伝達以外のサイトカイニンシグナル伝達経路の存在の可能性が云われてきたが、本研究によりそのような可能性は非常に低く、もし存在しても極めて限られた応答にのみ関わっていることが明瞭に示された。23ヶの標的遺伝子群は、これまでに報告されているタイプA応答因子群、サイトカイニン代謝酵素群、病傷害応答タンパク質群などをコードしている。また、サイトカイニンの代表的応答である細胞分裂に関わる遺伝子であるCDKAやCYCD3はARR1の標的遺伝子でないこともわかった。さらに、標的遺伝子の1ヶ、ARR6のプロモーター領域にARR1が結合し、その結合にはin vitroでARR1の結合配列として同定した配列(G/A) GAT (T/C)が含まれていることをゲルシフト法で示した。さらにこの結合配列が23ヶの標的遺伝子プロモーター領域に高頻度に存在していることも示した。
すべて 2007 2006
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Plant Cell Physiol. 48(2)
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