これまでの研究の結果より、シロイヌナズナの根毛における先端伸長の維持にはホスホリパーゼD(PLD)の一種であるPLDz1の機能が関わることが明かとされている。そのシグナル下流の因子を明らかにする目的で、PLDの生成物であるホスファチジン酸(PA)との結合が予想されるタンパク質としてホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PI(4)P5K)に注目した。シロイヌナズナにはPI(4)P5K遺伝子が11種類存在する。それら遺伝子の発現を器官別に調製されたRNAを用いてNorthern法により解析した結果、PIP5K3遺伝子が根において特異的に発現していることが明らかになった。さらにプロモーターレポーター解析により、PIP5K3の発現を細胞レベルで解析したところ、根の根毛発生領域において、PIP5K3プロモーターが根毛細胞列特異的に強く発現していることが示された。 つぎに、PIP5K3のT-DNA挿入変異体を複数得、それらのホモ接合株を解析した。その結果、それらの根毛の伸長が有意に抑制されていた。誘導的発現系を用いて根においてPIP5K3の過剰発現を行ったところ、根毛の伸長が促進された。また、PIP5K3とYFPとの融合タンパク質は伸長過程の根毛の先端部に局在した。これらの結果は、PIP5K3遺伝子が根毛の伸長を正に制御していることを示している。
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