シロイヌナズナの花茎の重力屈性に関連する新しい遺伝子の単離と解析を行った。その結果、次の事が明らかになった。 1、既に我々の手で単離し解析していた感受ができないsgr2と感受後すぐに異常の生じるsgr5変異株の花茎を材料に、重力方向を変えて30分、つまり屈曲をはじめる時期に発現する遺伝子を野生株とマイクロアレイで比較した。その結果、発現が変化する遺伝子が得られ、それらの発現プロファイルの経時変化を調べる事でこれらは、重力方向を変化させて30分までに発現が上昇してその後発現が高く保たれる遺伝子群と、30分くらいで一過的に上昇した後すぐもとのレベルに戻る遺伝子群と、逆に30分頃までに一過的に発現が落ちその後回復する遺伝子群に分かれた。また、花茎を上下に分けて発現の差を調べた所、最初のグループに含まれるIAA5遺伝子は明らかに上下で発現量に大きな差が見られた。なお他の遺伝子は上下での顕著な発現量の差は見られなかった。IAA5タンパク質は核に存在し、オーキシンによる転写の調節に関与する事が知られている。このタンパク質にドミナントポジティブ型の変異を入れて植物で発現させた所、形質転換植物の花茎は弱い重力屈性反応を示した。この事は、重力屈性反応にこのタンパク質を介したオーキシンの信号伝達系が関与する事を示唆している。 2、花茎で重力感受ができないsgr2の原因遺伝子はフォスフォリパーゼA1をコードしていると考えられる。この変異株のサプレーッサーを単離し、その原因遺伝子をクローニングした所、アシッドフォスプァターゼに相同性が高いタンパク質をコードしていた。両タンパク質は脂肪酸の代謝で逆反応に関わると考えられ興味深い。両方のタンパク質に蛍光タンパク質を融合して細胞内の存在を調べた所、どちらも、液胞膜と細胞内の共通のオルガネラに散在していた。この事は、これらのタンパク質が液胞に存在する事が花茎の重力屈性に取って重要である事を示唆している。
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