研究課題
植物ホルモン、アブシジン酸(ABA)は植物の生活環における様々な局面で重要な役割を果たしており、特に、種子の成熟や休眠の維持、乾燥や低温などの環境ストレス応答において中心的に機能することが知られている。この数年間で、ABA前駆体やABA生合成経路の各段階に関与する分子が特定され、ABA生合成経路は明らかとなってきた。本研究では、主に乾燥によって急速に増加するABA生合成に注目し、シロイヌナズナを実験材料として用い以下の研究を進めた。(1)乾燥処理によって増加するABAがどこで増えるのかを根と地上部(ロゼット葉)で比較するとともに、乾燥刺激の受容部位について検討を加えた。(報告集、第1部)(2)ABA欠損変異体の一つaba2の原因遺伝子(AtABA2)の特定に続きその植物体内における分布に関する詳細な観察を行った。(報告集、第2部)(3)ABA生合成に関与するAtNCED3,AtABA2,AAO3の3つの酵素が乾燥応答時にどの組織で発現し、ABAがどこで合成されているかについて主にそれぞれに特異的な抗体を用いた組織化学的方法で調べた。(報告集、第3部)その結果、乾燥処理によるABAの急速な増加は、その乾燥刺激の受容とともに葉で起こり、葉に蓄積したABAの一部が根に移動すること、AtNCED3,AtABA2,AAO3の3つの酵素の主要な発現部位が、葉脈を中心とした維管束柔組織であることが明らかになった。これらの結果は、維管束の導管、もしくは篩管で生じた水ポテンシャルの変化を、維管束柔組織の細胞が感知し、その細胞内で急速なABA合成が引き起こされる可能性を強く示唆するものであり、植物における乾燥ストレス応答とABA生合成の関与についての分子レベルでの詳細な機構の解明に大きく貢献するものである。
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