フィトクロム依存の光形態形成反応(幼葉鞘の光成長阻害)が欠損したイネ突然変異体(cpm1)を分離し(Biswas et al.2004)、その原因遺伝子をマップベースクローニングによって解析したところ、ジャスモン酸生成合成酵素AOS(allene oxide synthase)をコードする遺伝子(OsAOS1と命名)であることが判明した。本研究はこの突然変異体を用いて、イネの光形態形成、開花プロセス、傷害・ストレス耐性におけるジャスモン酸の役割を明らかにする目的で計画された。本年度は次の成果を得た。(1)正常なOsAOS1遺伝子でcpm1突然変異体を組み換えて、稔性および光成長反応が回復することを確認した。これによって、cpm1突然変異体の原因遺伝子はOsAOS1であることが確定した。(2)cpm1変異はOsAOS1遺伝子の点突然変異であり、RT-PCRなどを用いた発現解析から、変異体においても変異したOsAOS1遺伝子のmRNAが作られていることがわかった。現在、酵素活性に対するcpm1変異の影響を調べるために、大腸菌の系を利用してOsAOS1遺伝子を発現させ、OsAOS1タンパクを精製して、酵素活性を測定する研究を進めている。(3)開花プロセスのおけるAOS遺伝子の役割を明らかにするために、GFP遺伝子と融合させたOsAOS1キメラ遺伝子でcpm1変異体を組み換えた。現在、組み換え個体が再分化し始めたので、表現型の回復を確認してから純系統の作出に取り掛かる。(4)cpm1突然変異体の病害耐性を試験するために、いもち病菌を野生型品種とcpm1突然変異体の葉に接種し、病斑を調べたが、優位な差は見られなかった。今後、その他の病原菌(白葉枯れ病菌など)を用いて検定を進める予定である。
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