研究概要 |
ペチュニアのクラスCホメオティック遺伝子pMADS3は、雄ずいおよび雌ずいに特異的に発現し、その発現は第2イントロン中の転写制御領域を介して制御されている。pMADS3のゲノム配列を含むDNA断片(pMADS3:GUS)をペチュニアに導入すると、花弁、がく片、茎葉に内在性pMADS3がエクトピック発現する現象(ect-pMADS3)を見出した。類似の現象の報告はなく、新奇なタイプのエピジェネティック転写制御と考えられたため、分子機構解明を行った。ect-pMADS3表現型発現には、pMADS3第2イントロン(4kb)が導入遺伝子に含まれることが必須であり、導入遺伝子を失った後代個体にもect-pMADS3表現型が持続した。さらに、第2イントロンのセンスおよびアンチセンス配列をそれぞれ含む異常RNAの蓄積が認められた。これらのことから、我々は、本現象にRNA-directed DNA Methylation (RdDM)の関与を推測した。その検証のため、第2イントロンの部分配列を標的とした逆反復配列(Inverted repeat, IR)発現によってRdDMを誘導し、ect-pMADS3現象誘導の有無を調べた。その結果、部分領域II(1kb)を標的とした形質転換系統において特異的に、pMADS3エクトピック発現が誘導された。さらに、領域IIを細分したDNA領域をIRの標的とすることにより、pMADS3エクトピック発現誘導に必要十分な300bpの部分配列を特定した。また、pMADS3エクトピック発現を示した系統では、IRの標的としたDNA配列のメチル化が確認された。これらの結果は、pMADS3のエクトピック発現に転写制御領域を含むDNA配列のRdDMを介した制御が関与し、DNAメチル化が遺伝子の転写抑制だけでなく、転写活性化を誘導する場合もあることを示している。
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