研究課題
基盤研究(B)
粘菌細胞の分化制御機構に関して、次のような点を明らかにした。1)ミトコンドリア局在型の分子シャペロンTRAP1(Dd-TRAP1)は粘菌細胞にも存在し、この分子は前飢餓応答(prestarvation response ; PSR)を誘発する。そして、分化とカップルして、この分子は細胞表層からミトコンドリアへとその局在性を変化させ、このミトコンドリアへの移行が分化を促進する。2)免疫電子顕微鏡的研究により、Dd-TRAP1は、多細胞期(移動体)の予定胞子細胞では予定胞子特異液胞(prespore-specific vacuole;PSV:胞子細胞壁の形成に必要とされるオルガネラ)に局在することが示され、PSVがミトコンドリアを構造的基盤としてゴルジ体との協調下で形成されることが強く示唆された。これに関連して、3)Dd-TRAP1をRNAi法でノックダウンすると、PSRが阻害されるとともに、胞子形成が顕著に抑制される。他方、4)細胞内でのある量(正常の1/4)以上のミトコンドリアDNAの存在が、細胞の増殖はもとより分化の開始や正常なパターン形成に必須とされる。5)このようにミトコンドリアDNAを顕著に減少させた細胞(ρ-delta cells)では、PSVの形成および胞子分化が選択的に抑制される。これらの知見はいずれも、飢餓応答・分化制御面でのミトコンドリアの重要性に関して強い示唆を与えた。また、6)細胞周期の進行に鍵酵素として必要とされるタンパク質フォスファターゼ(Cdc25)の粘菌ホモログ遺伝子(Dd-cdc25)の単離・同定に成功し、この分子のリン酸化様式が飢餓処理とそれに伴う発生過程において顕著に変化することを見出した。
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International Review of Cytology (印刷中)
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