研究概要 |
今年度は,モノアラガイの行動変容において重要な役割を果たす特定単一神経細胞内での転写因子の定量解析を試みた.まずは転写因子のC/EBPに着目し,免疫組織化学法で単一神経細胞内でのその発現量変化と行動変容との関係を調べた.その結果,行動変容に伴ってタンパク質レベルは増加することが明らかとなった.一方,定量化をより一層進めるために,酵素サイクリング法と免疫抗体測定法と組み合わせて,高感度定量測定法を開発する試みを始めた.酵素サイクリング法では,Glycerol-3-phosphateがGlycerol-3-phosphate Oxidaseにより酸化され,、Dihydroxyacetone-3-phosphateと過酸化水素(H_20_2)が生成する.また,生成したDihydroxyacetone-3-phosphateはGAPDHにより還元され,Glycerol-3-phosphateに戻る.戻ったGlycerol-3-phosphateは再びGlycerol-3-phosphate Oxidaseにより酸化され,Dihydroxyacetone-3-phosphateと過酸化水素が生成する.この反応(サイクリング)が繰返される度に,過酸化水素が蓄積することになる.この過酸化水素を検出して定量測定する.この時点での過酸化水素の蓄積反応は直線的でしかないが,標識酵素にトリオースイソメラーゼを用いることにより,GAPDHの基質であるDihydroxyacetone-3-phosphateをサイクリング反応系に継続的に追加することができ,その結果,過酸化水素の蓄積反応は幾何級数的に増大することがわかった.来年度はこれをさらに発展させて,単一神経細胞内での定量ができるようにする.さらには他の転写因子であるCREBの抗体作製も始め,現在その特異性を検査している.
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