平成17年度の研究で発見したクラミドモナスの細胞内に発現している原核生物型機械受容チャネルMSC1についてさらに詳細な電気生理学的解析を行った。その結果、アミノ酸配列のN末にあるシグナル配列をつけたままで大腸菌に発現させることはできないが、シグナル配列を削ると発現できることが分かり、大腸菌での膜蛋白質発現の手法として新しい知見を得ることができた。これまでの成果を米科学アカデミー紀要に論文として発表した。 光刺激を与えても後退遊泳をしないクラミドモナスの変異体ppr2では、カルシウムチャネル遺伝子のひとつが発現していないことを平成17年度に解明したが、そのさらなる解析を行った。ゲノムのDNA塩基配列を調べたところ、そのカルシウムチャネル遺伝子のところに変異体作成に用いたプラスミドの断片の挿入があることが分かった。ppr2を野生株と戻し交配したところ、後退遊泳の異常とゲノムへのプラスミド断片の挿入がリンクしていることが分かり、後退遊泳の異常はカルシウムチャネル遺伝子の異常によることがほぼ確実になった。このカルシウムチャネルは6回の膜貫通部位を持つドメインが4回繰り返す脊椎動物で見られるカルシウムチャネルと同じ構造をしており、カルシウムチャネルは進化の初期の段階で今の形になったことを示している。脊椎動物のカルシウムチャネルと比較したところ、Tタイプのカルシウムチャネルと最も相同性が高かった。 クラミドモナスのTRPチャネルの機能を解明するために、そのすべてのcDNAの部分配列をクローニングした。局在を明らかにするためにその一部を大腸菌で発現させ、精製したサンプルを用いて抗体を作製した。予備実験により、鞭毛に局在するTRPチャネルもあることが分かった。現在、電気生理学的性質を明らかにするためと、RNAiによる機能解明のために、全長cDNAのクローニングを行っている。
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