研究概要 |
1.視葉から行動リズムにいたる神経路を、ニッケル・コバルトのバックフィル染色と外科的手術の併用により解析した。その結果、視葉出力系は、脳内でシナプスし同側の頚部縦連合を下降する経路と、脳中央腹側部を走行した後、反対側頚部縦連合を下降する経路があることが明らかになった。視葉ニューロンと脳下降性ニューロンとのシナプス部位は、前大脳側後方部と、中大脳中央部付近であることが推定された。 2.Lucifer Yellowを用いたoptic stalkからのバックフィル染色、および細胞内染色,および抗PDF抗体を用いた免疫組織化学の結果から、視葉板のPDF細胞は外キアズマと視葉板を神経支配し、視髄とaccessory medullaは視髄のPDF細胞により神経支配されることを明らかにした。 3.昨年度に引き続き、視葉から時計遺伝子のクローニングを試み、これまでにperiodについては全長を,timeless, clock,およびdoubletimeについてはもう少しで全長を得るところまで進展した。timelessを用いたreal-time PCRの系を確立した。内部標準遺伝子を検討し、rpl18aが適切であることを見出した。Real-time PCRの結果、視葉以外に、脳、複眼、マルピーギ管、腸、前胃等、からだの各組織でtimelessの発現が見られ、しかも多くの組織で明け方より、日暮れに多い発現の日周性を示すことを明らかにした。これらの周期性は視葉の切除により消失することから、視葉時計により制御されることが示唆された。 4.per dsRNAの幼虫腹部への投与により、歩行活動リズムが消失または不明瞭になることを明らかにした。
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