研究課題
琉球列島での分化が著しいヤマタニシ属CyclophorusとRathouisiidaeについてmtDNAの分子系統地理学的解析を行った。Cyclophorusでは琉球列島の各地域集団間で明瞭な遺伝的が認められ、少なくとも8つの系統群が識別された。これらの系統群はいずれも分布域が狭い範囲に限定され、他の系統群とは異所的または側所的に分布した。これらの系統群は既知の分類群に合致することが多いが、これまでに別種とされていた集団が他の島の系統群の中に含まれるなど、分類学的な変更が必要となることが分かった。また、異所的に分化した2系統が同じ島内で二次的な接触、共存していると考えられるケースが2例発見された。核ITS領域を用いて遺伝的流動について検討したところ、上記2例では部分的な交雑が起きていながら遺伝子流動がほとんどないことが分かり別種に分化していると考えられた。遺伝的に認識された系統群および種は形態分類によって識別することが困難で、Cyclophorusは多くの隠蔽種を含む。なお、地域集団間の類縁関係は他の分類群や古地理とは全く一致せず、複雑な歴史を経て分化した。ことが推定される。Rathouisiidaeでは多数の未記載種が発見され、分子系統解析を行ったところ、形態学的に識別された分類群は遺伝的にも分化していることが確認された。複数の島にまたがって広域に分布する種では各地域集団間の遺伝的分化が大きく、地域集団を単位とした保全が必要である。地域集団の系統関係は古地理とおおむね一致したが、複数の属に分割する必要があると考えられる。
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