(1)オオハマボウと近縁4種ついて、葉緑体DNA5領域の塩基配列を用いて系統解析を行った。また、65集団についてハプロタイプの地理的分布を調べた。その結果、近縁4種はいずれもオオハマボウから分化したこと、オオハマボウでは複数の共通ハプロタイプが広く分布していること、アメリカハマボウ(Hibiscus pernambucensis)ではパナマ地峡を挟んだ集団間で遺伝的組成が極端に異なるが、大西洋側の集団ではオオハマボウからの遺伝子浸透があったことが示唆された。 (2)オオハマボウでマイクロサテライトマーカーの開発を行った。12のマーカーが得られ、そのうち6つは集団解析に利用できることが示された。 (3)上記マイクロサテライトマーカーを用いて、オオハマボウと近縁4種、計約80集団の遺伝的分化の程度を調べた。その結果、オオハマボウでは、太平洋・インド洋地域では頻繁な遺伝子流動があること、西アフリカのオオハマボウ集団は他の同種集団から非常に分化していること、オオハマボウとアメリカハマボウの種間では明瞭な分化があること、アメリカハマボウの太平洋と大西洋の集団間では遺伝的分化がほとんど無いことが明らかになった。 (4)世界各地から得られたグンバイヒルガオの16集団の遺伝的分化の程度を、AFLP法を用いて解析した。その結果、ssp.pes-capraeに相当する集団は、ssp.brasiliensisに相当する集団とは明瞭に分化していること、ssp.brasiliensisの集団間では、大洋毎には明瞭な分化は見られないことが明らかになった。 (5)Rhizophora mangleの太平洋側と大西洋側の集団を用いて、葉緑体DNAのtrnS-trnG遺伝子完了域の塩基配列を用いた解析を行った。その結果、パナマ地峡を挟んだ明瞭な地理的構造が存在することが示唆された。
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