研究概要 |
(1)標本の現地採集: 代表者西川が、2004年5月25日から6月5日まで、オーストラリア南東のメルボルン沖と東海岸中央部のポートカーティスにおいて、調査船をチャーターしてドレッヂをおこなった。その結果Epigonichthys australisとBranchiostoma moretonenseを採集することができたが、目的種のひとつB.minucaudaは採集できなかった。なお、予定した南アフリカ共和国での調査はカウンターパートの急病、そしてスリランカでのそれは渡航直前に発生したスマトラ沖地震・津波による同国の甚大な被害のため、それぞれ断念せざるを得なかった。 (2)形態と分子の解析: 分子系統学的解析は、研究分担者西田のところで、東京大学海洋研究所・研究機関研究員昆健志博士の協力と、(株)ハイテック野原正広博士の支援をえて、試料からDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAの塩基配列を決定して、分子系統解析をおこなった。手持ちの未解析資料であるB.longirostrum、B.californiense、B.caribaeum、鹿児島県沖の深海産ナメクジウオ類などをおもな対象とした。これらのデータを基礎に、最尤法、最節約法、最少進化法、さらにはベーズ法など、さまざまな系統解析法を用いて、系統樹の構築をすすめた。あわせて、深海性種について既往種との形態比較を行った。 (3)研究成果の公表: ・Branchiostoma属の解析結果の一部は、太平洋と大西洋における系統分化がかなり古いことを指摘する論文として学会誌に発表した(Nohara et al.,2004)。 ・深海性ナメクジウオ類については、新種Asymmetron inferumとして新種記載した(Nishikawa,2004)。また、日本動物学会第75回大会と第21回しんかいシンポジウムでポスター発表した。 ・Epigonichthys属の解析結果の一部は、ミトコンドリアゲノムの遺伝子配置変動の発見を中心に、学会誌に発表した(Nohara et al.,2005)。 ・上記成果を総まとめして、東大海洋研共同シンポジウム「境界動物の生物学」で講演した。
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