研究課題/領域番号 |
16370046
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
今市 涼子 日本女子大学, 理学部, 教授 (60112752)
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研究分担者 |
山田 陽子 日本女子大学, 理学部, 助手 (10174749)
平塚 理恵 東京慈恵医科大学, 医学部, 講師 (30246376)
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キーワード | 配偶体 / 前葉体 / シダ植物 / 形態形成 / 分子系統 / 頂端分裂組織 / 周縁分裂組織 / 進化 |
研究概要 |
最終年度として、配偶体の形態形成過程についてできるだけ多くの種をカバーできるように表面連続観察法を続けた。地中生で培養が困難とされてきたハナヤスリ科の塊状配偶体の培養に1年かけて成功し、胞子発芽後ランダムな分裂によって形成される塊状部に、後で一部に分化する頂端分裂組織の働きにより軸状の配偶体が形成されることがわかった。一方、シダ類の初期に分岐したと考えられるゼンマイ科はウラジロ科の配偶体では、胞子発芽後初期にやはり、塊状部が形成され、この先端部に形成される頂端細胞の働きによって扁平は心臓形部が付け加わる事が示された。以上から、塊状か扁平(心臓形)かの違いは、初期に形成される塊状部に形成される頂端分裂組織が2側面の分裂面をもつ頂端細胞をもつか否かで決まると結論づけられた。前者のハナヤスリに関しては論文として出版し、後者のウラジロ科については、2007年3月の日本植物分類学会にて発表した。次にすでにGenbankなどに登録されているにrbcL遺伝子とrps4遺伝子の情報をもとにNJ法によって、シノブ科を外群とするウラボシ科、ヒメウラボシ科シダ類全体の系統樹を作成し、配偶体形態情報を配置し、形態進化過程を推定した。初期に塊状であった配偶体は、頂端分裂組織を分化させることにより軸状となり、頂端細胞をもつことで心臓形扁平部が足されることが示された。その後、塊状部は発生過程から消失し、完全心臓形配偶体が進化した。さらにいフサシダ科やウラボシ科などいくつかの植物群において心臓形からリボン形への進化が起きたと推定される。心臓形からリボン形への進化は、心臓形のもつ頂端分裂組織の働きに比べ、隣接する周縁分裂組織の働きが強くなったためと考えられる。また不定形配偶体では、発生初期に働く頂端分裂組織が途中で消失し、完全に周縁分裂組織に置き換わるとともに、頂端分裂組織を頂点とする極性軸が消失する。
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