研究概要 |
好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris R-47,以下T.vulgaris)は、2つのα-アミラーゼ(TVA1,TVA2)を持つ。TVA1は,菌体外酵素であり,比較的高分子量の基質に対してよく働く。TVA2は菌体内酵素であり,環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)の加水分解能力に優れ,シクロデキストリン加水分解酵素として位置づけられる。T.vulgarisのゲノム上TVA2の上流にはCDの運搬に関与すると考えられるABCトランスポーター(CDK),CD結合タンパク質(CDE),および2つのCD膜間輸送担体タンパク質(CDF, CDG)の遺伝子が存在し,下流にはグルコアミラーゼ(TGA)およびこれらの遺伝子群の発現を調節するレプレッサータンパク質(CDI)の遺伝子が存在している。以上のことから,T.vulgarisは,CD代謝・運搬系を持つことが予想される。本研究課題の目的は,これらのタンパク質の3次元構造をX線結晶解析により決定し,CD代謝・輸送マシーナリーについて,構造生物学的に理解することである。研究期間中に得られた成果は以下の通りである。 (1)TVA1と長いオリゴ糖との複合体のX線結晶構造解析を行い,TVA1の基質認識・加水分解機構に関する新たな知見を論文誌に報告した。 (2)TVA2とCDを含む各種の基質との複合体のX線結晶構造解析を行い,TVA2の基質認識・加水分解機構に関する新たな知見を論文誌に報告した。 (3)TGAの予備的なX線回折データの収集に成功し論文誌に報告した。 (4)CDEの2.4Å分解能でのX線結晶解析に成功し,座標のPDB登録を行った。 (5)膜貫通型タンパク質であるCDF, CDGについて,可溶化タグを有する可溶タンパク質として大腸菌にて大量発現に成功した。 (6)CDIの結晶化および予備的な3.5Å分解能のX線回折データの収集に成功した。
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